恋する小鳥

Irreplaceable 

老中ノスタルジー

空は見てるさ

私が初めてこの家を見たのは25年前、
その頃は満開に咲いた花で、枝がピンク色に見えるほど、
そのほんのりと甘い香りは、いまでもよく覚えている。

みんな開くんだぞ

だけど、貸家にして持ち主が次々と代わっていく間、
あまり手入れをされることのなくなった庭の木たちは、
どんどん荒れ果てていった。
そして、母がうつりすんでも、たまに見にきた祖父が病に倒れてから、
庭仕事などに目を向けることのない忙しい生活のなかで、
気づけば木々たちは荒廃の一途をたどってた。
そして、幼い頃から食べても食べても余って腐らせたほどの、
夏みかんや、グミの木が消えた。
二年前にここに引っ越してきた私の目に飛び込んできたのは、
切られたまま放置された、夏みかんたちの大きな切り株。


「実がならなくなったから」

「花が咲かなくなったから」

だけど、本当に寿命だったのかどうか、
私は知らない。



子供の頃住んでいた家の角には大きな桜の木があって、
近所の子供が入学式の写真を撮りに、いつもやってきていた。
なのに、ケムシが多いとか、家に桜はよくないといわれつづけ、
最終的に通行の車の往来のために切ることになった。
その日、私の家には親戚があつまって、
ご大層にどこかの神主さんまで呼ばれて、祈祷がなされた。
木を切って、たたられて家が傾くということを本気でみんなが恐れてた。
だけど、ほんとに私の生家は、
その桜を切った後から、がらがらと崩れていった。
不幸は重なり、自殺は増え、借金は膨大になり、
広くて大きな家のすべてに赤札が貼られた。
最後はお米だってなくなって、お弁当も持てず、
もはや学校の先生にパンをたかる始末だった。
そして今はもう、競売にかかり、とり壊され、
他のひとが立派な家を建てて住んでいる。
たくさん生えてた庭の木たちは全滅だ。
桜の道連れか、私の一族の愚かさか。

だけど、私は桜に謝る大人たちの姿を忘れてはいないし、
木に魂が宿っていると考える風習を、いまも持ち合わせている。

だけど、今の家のあるところは、もっと商業農家が多いせいか、
非常に野菜や木や生き物に対して、シビアでクールに感じる。
駄目なもんは駄目だ、斬って取り替える、
満開に咲かないなら意味がない、不良品だ、
食べれるだけ実がならないなら意味がない。
いまだ、馴染めずにいるけど。

だから、みんなが「これは切ってしまえ」という、
古い梅の木を、私はどうしても うんと言えないでいる。
確かに、咲かなくなって、つぼみがついても開かないものが多くて、
木はカイガラムシでいっぱいに埋め尽くされて、苔もできず、
その姿は老木の最期にしか見えなくて、

「これは枯れてるんとちがう?」

通りすがりのひとに、何度たずねられただろう。

「はよ切らなあきませんねん」

何度、祖母が答えているのを聞いただろう。


だけど、我が家の老中・梅之助梅枝門は、
頑張って咲こうとしていた。
それは毎日見る、私にしかわからない変化ではあっても、
春夏秋冬、少しずつ変化を見せていた。花を咲かせるサイクルを守ってた。
だから私は毎週日曜になればカイガラムシを歯ブラシでとって、
肥料をあげて、草を抜いて、何でもいいから声をかけた。
剪定なんてよくわからないけど、古い枝を見つければカットした。
いらないところをカットすれば、
その分栄養が他にまわるのは、仕事とおんなじだ。
そんな程度の知識しかないわけだけど、
信じる心は強かった。


「梅枝門はまだ咲くはずだ」

「枯れてないのに切る必要はないんだ」



木はそんなに簡単に、切っちゃいけないんだ。



そして、土曜日、
夜中に帰ってきて外灯に照らされた梅枝門を見上げたら、

かわいいお花

今年はじめて、蕾が開いているのを発見。
かわいくて、どうしようもないほどかわいくて仕方のない、
可憐な花が咲いていた。
暗いのに、思わず庭へまわりこんで 必死に石にのぼって近づいて見た。

うわっと咲きました

泣くだろうと思ってたけど、やっぱり泣いた。

どまんなか

このあでやかな濃い桃色はどうだろう。
なんてかわいい花なんだ。
ところどころ咲くだけで、けして一気に咲かせる力はないんだけど。

可憐ですな

なんか、梅枝門じっちゃんの孫娘みたいだね。

まだ6分咲き・・・


まず、ほっとした。
香りも全然しないんだけど、それでも、うれしかった。
あなたは、まだ生きてるし、
まだ切られる必要なんかないし、
これからも毎年、あなたと一緒に春を迎えたい。

ご老中・・・!

今年も咲いてくれてありがとう。
私はあなたに感謝する。











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写真は昨日の昼間のものです

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Category: 恋するガーデニング
Published on: Mon,  22 2010 16:37
  • Comment: 4
  • Trackback: 0

老中 梅枝門 古梅

4 Comments

S子  

セイ様へ

コメントありがとうございます。
そうなんですよねえ。ああいうお年寄りって
ショクブツとか大事にするイメージがあったんですけど、
この地域の人たちは ほんとになんか 厳しいんですよね。
本物の田舎のほうが、実際はそうなのかもしれないなー。
切れ切れウルサイんですよ、ちょろっとしか咲いてないんですけど
「今、満開。」
って、親戚に言いふらしている私がいます。

2010/02/24 (Wed) 13:37 | REPLY |   

S子  

片羽インコ様へ

コメントありがとうございます。
とんでもないです、私余計な枝とかも切ってるんじゃないかって
どきどきなんですよ。
でも ほんとに花は可愛いです。
桜も好きですけど、花のかわいさではやっぱり梅かなー。

2010/02/24 (Wed) 13:32 | REPLY |   

セイ  

私まで泪が出そうになりました。
(いつも読み逃げですみません)
そうです 木は簡単に切ってはいけないのですよ
生きているのですから
当たり前の事なのに 
言葉を交わさないから存在を軽んじているのですよ
でもちゃぁーんと花を咲かせてS子嬢に応えてくれたんですね。
通じてますねぇ なんだか私まで嬉しい気持ちになっちゃいました。

2010/02/23 (Tue) 21:28 | REPLY |   

片羽インコ  

可憐だ

老中・梅之助梅枝門さま
凄く可憐じゃないですか。

いい、

凄くいいです。

ピンクの花びらがキレイ

S子さんのお世話の賜物でしょうね。

2010/02/23 (Tue) 09:59 | REPLY |   

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