恋する小鳥

Irreplaceable 

おもいで(2)

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嘘



久しぶりに思い出すと、青春だなーと思いました。
同じセーラー服なのに、
加工しまくって、超ロングか超ミニを履いていた小悪魔のメリハンと、
貧乏で着る服がなくて、普段も制服を着たままだった私と、
授業中でもなぜかジャージで許されていた大女の東山。
まだまだ続きます、何度かちょこちょこ書きなおしてるので、
語尾が変わってるところなどがあると思います、ごめんなさい。






メリハンのお兄さんが逆上したわけ。
それは、新しい学校で妹が、差別されたり虐められたりするかも という、
不安を、そこの家族があらかじめ持っていたということ。
その理由は多分ひとつ、
自分たちが、「在日朝鮮人だから」。
今なら、わかるのに。


だけど、私たち迎えた側の学校は、ほんとに田舎ののんびりしたところで、
そして教育委員会から表彰されるほど道徳教育がさかんだったのに、
在日という言葉を、聞いたことがない子供がほとんどで、
正直、なにをそんなに激昂されてしまっているのかが、
まったくわからないまま、私は蹴られつづけた。
そして、恐怖のなか、お兄さんの後ろにいたメリハンに向かって、

「だって、アリランて歌ってたやんか?」

聞いた私に彼女が、本当にそ知らぬふりで断言した。

「そんな歌、歌ってへん」

クラスメートがあの日何度も聞かされたその歌声を、
彼女は恥じるでも、意地をはるでもなく、そう言いきった。
本当に、一度もそんなことはなかったというように。
それは、ショックだった。
嘘つかれたことより、つき離されたことより、
お兄さんにチクられたことより、
まったく完全に嘘を真実に変えることのできる
同い年の子供に出会ったことがショックだった。
あまりにも、彼女は大人で、
私は、無防備だった。



自慢するわけではないけれど、その小学校は私の祖父と曾祖父が校長を、
祖母が教頭をつとめていた時代があった。
だからある日校長室を訪問したときに、
仏壇にある祖父たちと同じひとの写真が堂々と飾ってあって、驚いた。
校長や教頭先生は私を「○○先生のお孫さん」と呼んでいたし、
隣にある幼稚園では、伯母が園長を務めていて、母が保母をしていた。
私の家はもうとっくに崩壊が始まっていたけれど、名前だけは名士の家で、
生徒会にもつとめていた私は、けして不良のレッテルを貼られたことがなかった。
その私が、中学の男子生徒に殴られて倒されてしまった。
暴力もいじめも、まったくなかった学校へ突然吹き込んだ赤いニュース。
それが、メリハンだった。


だから、彼女のひとことを聞いた後の事はほとんど思い出せないのだけれど、
とにかく聞いた話では、
先生が教室へいっぱいやってきて、お兄さんたちは走って逃げたらしい。
私は立ち上がることができたためか、病院へは行かず、
幼稚園からやってきた伯母が
車で家に連れ帰ってくれたことだけはなんとなく覚えてる。
そしてその夜は、中学から家に教頭先生やお兄さんの担任がやってきて、
もうひとりの伯母がその中学のPTA会長だったためか、対応してくれて、
というか激怒して、「このハゲ!」と叱り飛ばしていたのも、覚えてる。
だけど、それでも私の父親へは連絡がつかなくて、
母は緊急保護者会に出席しなきゃいけないのが面倒でパニックで、
私は結局ひとりぼっち、祖母の敷いた布団の上で、ショックで目を見開きながら、
自分がいったい、なにを間違ったのかを一生懸命考えた。

私の抱いた、外国語の歌への憧れのような気持ちと、
アリランを歌ったことを、他者からは公にされたくなかった転校生のこと。

あとからあとから、あの日のことを思い出して痛感するのは、
あのときの幼い私たちに、民族という文字すら知らなかった私たちに、
在日や、日韓、日朝、差別や区別、被差別部落の歴史、
いろんな大人たちが噛んで含めて、
結局飲み込んで教えてくれなかったことを理解できるすべはなかったこと。
知ってなくちゃいけなかったかもしれないけど、
知らないで、私は土足で入り込んで、
もしかしたら、在日という言葉を身につけて生まれついたメリハンが、
転校という人生の岐路に立ち、防御してきたはずのものを、
無邪気な世間知らずの私が、壊そうとしているように見えたのかもしれないこと。
多分、あの兄は、「新しい学校でなめられたらあかんぞ」と言い含め、
妹の前に立ちふさがるものはすべて壊す気ではやっていたのだろうと思う。

だけど、不思議と、悔しいとか、悲しいとかは感じなかった。
私の周りにはあれよあれよと大人達がやってきてガードしてくれたから、
私は3日くらい学校にも行かなくてよかったし、
かえって私が相手だったために大事になってしまったことで、
メリハンに申し訳ないような気持ちになった。

そして、今思えば、すごくありがたいことなんだけれど、
私はなんにも知らないまま、「アリラン」という歌を聴いて、
ただそのメロディーに心惹かれた瞬間のことを覚えてる。
あの、なんともいえないわくわく感は、その後の人生において、
まず「差別」から入ることをよしとしない、
柔軟な自分ができあがる良い経験だったと思う。
「○○だから、なんとか」というのでは納得できない。
良いものは、誰のだって、どこのだって、やっぱり良い。
もっと言っちゃえば、背景なんかくそくらえだ。

だから、私はそんなに怖いイメージがつかなくて、
なんか色々あったけど、生まれて初めて兄弟以外にどつかれたけど、
やっぱり登校した朝、真っ先に向かっていったのはメリハンの机だった。

「あんた、アリラン歌ってたやん。みんなの前で歌ってたやん」
「あたしは歌ってない、異邦人は歌ったけど」
「異邦人も歌ってたけど、アリランも歌ってたやんか!」
「そんな歌知らん、聴いたことない」
「いいねん、あんたがもし、歌ってないっていくら言ったって、
 私は歌ってたのを聴いたし、みんなも聴いた。それのどこが悪いの?」
「また兄貴呼ぼか?」
「呼んだらええやん。あんたがアリランなんか知らんって言うて、
 私があんたのアリランがうまかったって言う。
 どっちも同じや。言いたいこと言って、なにが悪いの?」
「あんた・・・」


また喧嘩かと、教室全体がどん引きするなか、
私はメリハンにくってかかった。
とにかく、引き下がるわけにはいかないと思ってた。
小学生のなかでも、グループによる力均衡はわりと神経戦の世界で、
一度はずれると、無視もされるし、居心地も悪くなる。

なにより、私のまわりには大人が出すぎていて、
メリハンと子供レベルで和解しないと、なんだかとんでもなことになりそうで、
そのことのほうが私には厄介だった。
だから必死にいつも、ついていった気がする。
そして私は、メリハンとつるんで遊ぶようになる。

周りは反対して、特に母は何度もほかの保護者から
「つきあいを止めなあかんよ」なんて言われてたそうだけど、
私はその後ずっと、メリハンと手を組んだ。
多分友達になれたんだと思う。
初めてメリハンの家に寄った日は、
さすがにお兄さんに会うのが怖くてびくびくしたけど、
お父さんもお母さんも想像どうり怖そうなひとで、
とにかくこの子の世界はちょっと怖いんだゾという心構えだけはできた。

ひとつだけ残念なことは、結果的にあの日以来、
メリハンは私に「アリラン」を歌ってくれることはなかったということ。
一度も、その事件には触れようとしないし、
私も、お兄さんに一度だけ頭をぽんと押さえて気まずそうな顔されただけで、
謝ってもらったことも、なにか賠償してもらったこともない。

メリハンが「ない」と言えば「ない」世界。

それは、良家と呼ばれ、名ばかりの名家の子女の仮面をかぶらされた、
私の偽装の毎日の、たったひとつの逃げ場所になった。
貧乏で、給食費さえ払えない私の家で、
門や庭が次々と改装されていくあの日々のパラドックス。
家のなかは混沌としていて、狂気の沙汰なのはこっちのほうだった。
だからのぞいた、知らない世界をのぞいていたかった。
まだ逃げ出すことはできなかったから、ただ外の世界を求めてた。
私の場所をメリハンのなかに見つけようとした。
そして、なかへ飛び込んだ私は、中学生になり、
さらにメリハンの騒動に巻き込まれていくことになる。





つづく








  「おもいで」

      1話 「転校生」
      2話 「嘘」 
      3話 「彼女の世界」
      4話 「青田さん事件」
      5話 「名前の由来」
      6話 「腐ったみかん」
      7話 「いじめと逆襲」
      8話 「彼女の正体」
      9話 「全裸事件」
     10話 「後悔」
     11話 「田部くん」
     12話 「殺人事件」
     13話 「つかのま」
     14話 「三本の矢」
     15話 「誕生」
     16話 「斑点」
     17話 「寄生」
     18話 「モノクローム」
     19話 「舌」
     20話 「呼び出し」
     21話 「罰」
     22話 「喪失」
     23話 「犬」
     24話 「希望の石」

   番外編(1) 「おねがい」
   番外編(2) 「おわび」








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こんなの続けてて大丈夫でしょうか・・・
関連記事
Category: 恋する思い出
Published on: Thu,  25 2010 18:49
  • Comment: 8
  • Trackback: 0

- 8 Comments

S子  

鏡花水月様へ

コメントありがとうございますー。

同じような・・・いえいえ、おそれ多いです。
にごった中学時代の思い出です、このあとは、
毎日毎日、どんどん純真でなくなっていく私の堕落がつづきます・・・。

2010/03/26 (Fri) 15:49 | REPLY |   

S子  

おりおり様へ

書けば書くほど思い出すようになってきました。
20代の頃は、まったく忘れていた気がするんですけどね。
今だからこそ、思い出すのかもしれません。
バッドエンドではない と思うので、そこだけはご安心をー。

2010/03/26 (Fri) 15:48 | REPLY |   

S子  

いらいざ様へ

いらっしゃいませー。
大野さんのことも書きたいことがあるんですけど、
残念、まだもうちょっとかかりそうです。
でも楽しんでいってくださいねー。

2010/03/26 (Fri) 15:46 | REPLY |   

S子  

片羽インコ様へ

投下しましたー。
よろしくお願いします。

2010/03/26 (Fri) 15:44 | REPLY |   

鏡花水月  

コクがあります

 
 この頃は、向田邦子のエッセイ「父の詫び状」を再読しております。

 なんか同じような香りがして読まずにいられませんでした。

2010/03/25 (Thu) 23:41 | REPLY |   

おりおり  

情景が目に浮かびます・・・鮮やかに覚えていらっしゃるんですね。

続きを読ませて頂くのが、少し怖い気がします。

2010/03/25 (Thu) 22:35 | EDIT | REPLY |   

いらいざ  

どきどきする・・・

続きぜひ読みたいです!

大野くん語り読みに来てましたが、こんなに読ませるブログ他に見たことない、面白いです!

2010/03/25 (Thu) 22:18 | REPLY |   

片羽インコ  

ハイ!

つづきをお願いします。

2010/03/25 (Thu) 20:33 | REPLY |   

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