恋する小鳥

Irreplaceable 

おもいで(4)

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青田さん事件



不良少女と呼ばれるひとたちの話なので、
文中、人として嫌な描写が出てくることもあるかと思います。
昔話なので、流してくださるとうれしいです。
読みがたい方はこのへんでやめてもらったほうがいいかと思います。






メリハンが新入生として入学してくると、
2年生3年生の「その類」のひとたちがすぐに接触にきた。
「その類」というのは、学校を締めている不良グループのひとたち。
つまりは生意気な新入生は叩き潰そうとする、怖い先輩たちのこと。
だけど、メリハンは、最初から余裕だった。
ちょうどその頃彼女のお兄さんは入れ替わりに卒業していたけど、
そのまま少年院に入っていて、不在だった。
だけど、その「ネンショー」という言葉の響きは絶大で、
そんな兄貴がいるメリハンに、まじめに手を出してくるやつらなどいなかった。
それにその兄の友人や彼女たちが、主のいない兄の部屋に立ち寄り、
溜まり場になっているのは事実で、
自然とメリハンを可愛がる元先輩が増えていた。
メリハンの後ろ盾は在日のネットワークもあってか想像もできないほど広く、
毎日夜まで彼らと遊び耽っていると噂の耐えないメリハンは、
どんな3年生よりも大人に見えていた。

そして、メリハンのもとに自然に集まってきた美女軍団なるもの。
これは、それなりに顔の綺麗な少女たちだけが入れる、
メリハンを取り巻く女子グループのこと。

中学に入ると、それまで気にならなかった同級生が、
だんだん細くて顔がかわいいということがわかってきて、ちやほやされ始める。
本人たちも、どうやら自分は他の子よりも外見が優れているらしいと気づいてくると、
他の女子より少し優位に立った気がして、もっともっと差をつけたくなってくる。
目立ちたくなるし、特別になりたくなる。注目されたくなる。
そして声をかけられるとハッピーな気分になって、
男子の目を気にするようになる。
もてるということは、少しずつませてくる。おしゃれが好きになる。
そして恋をするようになり、
恋の相談をするなら、もっと格好良い男子に会うなら、
必然的に、そこに見本がいた。カッコウのネタがいた。
それは、顔の広い、大人な雰囲気のメリハン。
たとえ自分がやりすぎて目立っても、
先輩たちが手を出せないほどの力を持っているからかばってもらえるし、
おしゃれを知っていて、他校の男子も紹介してくれる。
そんなメリハンの友達特権に憧れて、すりよっていく少女達のこと。


そんな子たちに囲まれても、美意識にたけていたメリハンはいつも、
「あんたはここが可愛い」「あんたはこうしたら綺麗だ」
そういって、彼女たちをいつも大声で褒めちぎってた。

「メリハンがあの子は可愛いって言ってたらしいよ」
そう噂されれば、学内の注目のまとになり、
にんじん毛と揶揄され悩んでいた少女に
「ソウルシンガーみたいでうらやましい」
と言ってあげれば、
その子は次の日から堂々と前を向いて学校に来るようになった。
私も本当にその子の天然パーマが「うらやましい」気がしたものだった。
メリハンは、言葉で愛と勇気を与えた。
彼女の人気はどんどん高まっていき、
メリハンの友達になることは、一種のステイタスになった。
だけど、メリハンは、
絶対に自分より上にいくことを許しているわけではなかったのだ。
ちやほやされて、美女軍団として華々しく踊り場を占領していても、
絶対にメリハンに従っていなければいけなかった。
なのに。

ある時、噂が流れてきた。
1組の、青田さんが全然学校へ来なくなったらしいと。
「どうやら登校拒否なんだって」
噂はまたたくまにひろがっていった。
私は7組だったので、1組の青田さんが誰なのかさえ知らず、
ふうんと適当に流していた。
正直あまり、興味がなかった。嫌な話だな とは思った。
だけど、そのあと流れてきた噂には衝撃をうけた。
「美女軍団にトイレに連れ込まれて、1日閉じ込められたんだって」
嫌な予感が的中した。
誰に?と聞く間もなかった。
メリハンの仕業だと、すぐにわかった。

その頃には、青田さんの両親が学校へやってきていて、
すでに学校中が大騒ぎになっていたのだった。
私が気づいた頃には、メリハンは騒動からしばらく登校していなくて、
美女軍団は連日、先生に取調べを受けているとのことだった。
私はすぐにその取り巻きのひとりをつかまえて、
一体なにがあったのか、詳しく聞いた。
彼女の話によれば、青田さんは小学校ではかなり美少女でもてはやされてきて、
姫扱いされて、大の人気者だったらしい。
確かに写真で見る青田さんは、生意気そうだけど整った顔の美人だった。
その青田さんは当然美女軍団にはいってきたんだけども、
もともとお高くとまっているところがあって、
メリハンは最初から気にいってなかったらしい。
その青田さんがだんだんメリハンとタメ口をきくようになり、
態度も慣れなれしく、わがままも多くなってきたことが、
どうやらメリハンの癇に障っていたらしい。
そして、なにがきっかけかはわからないけど、
ある日の放課後ふたりは喧嘩をし、
逆上したメリハンが女子トイレに彼女を連れ込んで、暴行したらしい。
そのとき、美女軍団は豹変したメリハンが怖くて止めることができず、
女子トイレで見張りをしていたそう。
そして出てきたメリハンはたったひとりで、
青田さんを閉じ込めたトイレの壁には、「故障中」と書いた紙を貼り、
家に帰ってしまったのだという。
そのとき青田さんが扉の向こうでわんわん泣いていて、
「こんな姿を見られたくないからあんたたちも帰って」
と泣き叫んでいたため、
美女軍団もそのまま家に帰ったんだそう。
どうやら髪を切られたらしかった。
そうしたら、青田さんはそのまま、
夜になって、親が学校へ連絡してくるまで、ずっと閉じ込められたままになり、
何時間も、幽霊が出ると噂のたえない、学校の汚いトイレに閉じ込められ、
精神的にまいってしまったということ。
そして彼女は、学校へ来れなくなってしまった。

青田さんが、けして悪いとは言わないけど、
彼女の日ごろのふるまいは女子の反感を買っていて、
最初は喧嘩だったのだから、彼女が助けを拒んだのだから、
メリハンだけが悪いわけではないという言い分はあった。

だけど、学校側はそんなことでは許さなかった。
メリハンは、びっくりするくらい重いお叱りを受けて、
お母さんが学校へしょっちゅう来るようになった。
そしてその事件のあと、
ほんの少しだけ母親に連れられてやってくる青田さんの姿が見られるたび、
その、制服も着ていない姿に、みんな釘付けになって注目していた。
私の目には、青田さんはそうやって用もないのにちょろちょろ来ることで、
登校拒否というツールをつかって、
また自分に注目が集まっていることを喜んでいる節があるように見えたんだけども、
大多数のみんなは「可哀相」だといって、彼女を悲劇のヒロイン扱いしていた。
その青田さんは、自分がどれだけの暴行を受けたかをあまり話さなかったため、
あの密室の女子トイレで、
一体メリハンが彼女になにをしたのかは誰にもわからず、
とんでもなく怖いことをされて口がきけなくなったらしい とか、
記憶がなくなるほどの恐怖を味わったらしい とか、
噂はどんどんひろがっていった。
あの人は怖いひとだ、あの人には逆らっちゃいけない。
あっというまに、美女軍団の名声は地に落ちた。
確かに一人の前途ある中学一年生が、
その後の中学生活をほとんど登校せずすごしたのだから、
人生をまげてしまった罪は、大きいかもしれない。
だけど、メリハンだって、それまでは学校にちゃんと来ていた。
なのに、事件のあと、2週間もの自宅待機がつづいて、
やってきたときには、もう髪が金髪になって、紫のルージュがひかれてた。

私がもし、美女軍団に入ってつるんでいても、
周囲に笑われないほど顔がかわいかったら、
この子の傍にいたのに、トイレのドアをあけて彼女を止めたのに、
青田さんを追い出して、何もかも揉み消したのに、真実を暴いてやったのに、

くやしくて、

もう、その「積木くずし」的なメリハンのいでたちが、
悲しくてならなくて、どうしようもなくむかついて、

夏休みを明日に控えた終業式の日、
廊下で、もう誰も近寄れない雰囲気をまとった彼女が、
「アハハハ」と不良グループの男子生徒と騒いでいる後ろ姿を見つけた。
制服に、赤や金の裏地を貼って、目立つことが喜びでしかない彼ら。
リーゼントにパーマ、そりこみに金のネックレス。
そんな時代遅れのスタイルのなかに、馴染んで鎖をまわしている少女。
私はその怖くて、恐ろしい集団に向かって、
あの日のように、向かっていった。
そして、まだ私に気づいてない金色の後頭部を、
いきなりおもいっきり平手でしばいた。

「んなにすんねんコラぁ!!」
「あんた、なにやってんの?!」

激怒して振り返った彼女にかぶせて私は叫んだ。

「いったい何やってんの?!そんなの可愛いと思ってんの?
 モテると思ってんの?おしゃれだと思ってんの?」

「あんた・・・」

「メリハン何やってんの?なんで来ないの?なんで言わないの?
 あんた、いったい、何やってんの・・・」


先に泣いたのは、私じゃなくて、メリハンのほうだった。
殴ったのが私だとわかった瞬間、メリハンの目には大粒の涙が溢れた。
私はそんなふうにいきなり泣かれたことがショックで、
見てられなくて俯いた瞬間に、ぼろぼろ自分も涙がこぼれてきた。
あんなに練習したのに、あんなにノートに書いて準備したのに、
私が言えた言葉は「あんた、何やってんの」だけ。
だけど、メリハンはその言葉に何度もしゃくりあげて、
「あんたまで泣かんといてよー」と泣いて、私に抱きついてきたのだった。
入学以来、自分から逃げるようにフェイドアウトしていった薄情な友の顔を、
兄に殴らせた、己の内なる残酷さを知られている顔を、
彼女は号泣しながら、両手ではさみこんで確かめていた。


今でも、あの熱いなにかは忘れられない。
メリハンが涙でぐちゃぐちゃの顔をして、うわーんと泣いている姿、
誰もが友達だとは知らなかった地味で平凡な私に抱きついてすがる姿。
メリハンの綺麗な目から、ぼろぼろと粒が湧き出たスローモーション。
ずっと、地味に学生生活を過ごしてきた黒髪でオカッパの私が、
学校の要注意人物をしばいて泣かして、抱き合っていた。
不良たちに、囲まれたまま。
ああもう、もう戻れないなあって。

あの日、学校の先生が止めにくるまで、
私とメリハンはずっと「あほ」だの「ばか」だの罵りながら抱き合っていた。
ほかのなにをこなしても
「青田さんに謝りに行く」と担任に課せられたことができない彼女は、
学校へくることに追い詰められていた。
そして身近だった社会に反抗する側に流されようとしていた、
ううん、本当はもう、流されてた。
私は結局それを止めることはできなかった。

だけど、あの日、泣きあったことで、
メリハンと私は、もう一度一緒にいることにした。
自分で自分に腹をくくった。誰になにを言われても、
この子と一緒にいるために、私が軌道でいようって。
彼女は私の知らないバックがいっぱいあって、きっと脱線していくことだろう。
だけど、私はここにいて、いつだって正しく走っている姿を見せていよう。
彼女が戻ってきたいときに、
安心して道を見つけられるように。

そして私は、自分の存在というものが、
誰かの心にあってはじめてできあがるものだということに気づいたの。




つづく








  「おもいで」

      1話 「転校生」
      2話 「嘘」 
      3話 「彼女の世界」
      4話 「青田さん事件」
      5話 「名前の由来」
      6話 「腐ったみかん」
      7話 「いじめと逆襲」
      8話 「彼女の正体」
      9話 「全裸事件」
     10話 「後悔」
     11話 「田部くん」
     12話 「殺人事件」
     13話 「つかのま」
     14話 「三本の矢」
     15話 「誕生」
     16話 「斑点」
     17話 「寄生」
     18話 「モノクローム」
     19話 「舌」
     20話 「呼び出し」
     21話 「罰」
     22話 「喪失」
     23話 「犬」
     24話 「希望の石」

   番外編(1) 「おねがい」
   番外編(2) 「おわび」
     










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中学1年の夏でした
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Category: 恋する思い出
Published on: Fri,  26 2010 13:43
  • Comment: 4
  • Trackback: 0

- 4 Comments

S子  

典様へ

こんにちは!コメントありがとうございます。
いやー・・・すごい照れます、いまごろ?!ってつっこまれそうですけど。
このあとはもっと重くていやーな展開になります。
だからこそ封印してきたはずなんですけどね。
でももう吐いちゃえって思って、書きます。
またぜひぜひ感想くださいねー。

2010/03/27 (Sat) 15:14 | REPLY |   

S子  

冬花様へ

コメントありがとうございます☆
簡単に終わるかなあと思ってたら、
なーんか長くなりそうな予感です。
でも反応がすごい気になってたので、
そう言っていただけるとすんごくうれしいです。
がんばって更新しますねー!

2010/03/27 (Sat) 15:10 | REPLY |   

典  

S子さんはホントにすごい人

S子さんは私の想像も及ばない経験をされてきたと、いつも思っていました。


今回の日記は、そのさいたるもの。


小中学生で、人を見極める力を持ってらして、締める所は締めてた。


本当にすごい人だと、改めて思いました。


結末が、とても気になります。

2010/03/26 (Fri) 23:14 | EDIT | REPLY |   

冬花  

続きが気になるなる

ものすごい気になりますね
そわそわします
早く続きを読みたいです

2010/03/26 (Fri) 20:34 | REPLY |   

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