恋する小鳥

Irreplaceable 

おもいで(6)

腐ったみかん


週末あけて、この昔話が、
ほんとうに書いてて大丈夫?と思い始めました。
絶対お客さん逃がしてるかも状態なんじゃないかと・・・。
しかもなんか、まだ続きそうだし、おかしいな、終わりが遠いな。
まあ、それでもいいよー って方だけお読みくださればこれ幸いかと…。
全部思い出なので、創作でない分、ちょっと生々しさが出ています。
そろそろ私が壊れてくるころになります。








どうして


『自分がいなければ』なんて強く信じてたんだろうね。
いつも心のどこかで、
『私があなたを助けてあげる』
そんな自惚れた気持ちで、手をつないでいたんだろうね。
誰よりも大人になろうとして急いでたあなたに、
私のあとに、ついておいで なんて


どのツラさげて、そんなことを。


  ◇   ◇   ◇


想像には難くないと思うのだけれど、
メリハンは、異常なほどのさみしがりやで、
起きている間は、いつも誰かがいないと気がすまないひとだった。
学校でも常に取り巻きに囲まれていたし、
夜は暴走族のバイクや車に乗っていて騒音を愛していたし、
ひとりで家にいるときは沈黙が耐えられず、必ず誰かに電話をかけていた。

その電話は彼女がかけ、彼女が切りたいときに切られるひどく一方的なもので、
大抵の友人たちは、あまりの長電話と、キャッチの多さに困り果てていた。
電話をしていても、メリハンはかかってくる電話すべてに出たし、
「キャッチがはいった」と言っては、そちらの話相手と夢中になって、
ほうっておけば30分以上その状態で待たされることもあった。
だけどこっちがそれを見越して切れば、
後から「なぜ勝手に切ったのか」と激怒してかかってくるので、
みんな仕方なく、まんじりともせず
彼女が自分との会話に戻ってくるのを待っていたものだ。
そんな状態だから、子供の長電話を気にした親たちの
学校への苦情もあいついでいたのだけれど、
青田さん事件で彼女の「やっかいさ」は先生たちの琴線でもあり、
誰も本気で彼女をとがめることはできなくなっていた。

そんな彼女からの電話は、私のところにもよくかかってきた。
ただ、私には良いか悪いか共通の話題がほとんどなかったので、
話がはずむことはなく、沈黙が続いた。
そのうちに、彼女は自分がひどく落ちている時や沈んだ気分のときに、
私を選んでかけてくるようになった。
今思えば、彼女は完全な躁鬱状態だったのではないかと思う。
それくらい、浮き沈みが激しくて、
いったんしくしく泣き出すと、最後は必ず「死にたい」とうめくばかりだった。
私はそんなとき大抵受話器を耳にはさんだ状態で、
宿題をしたりして、ぼんやりと、メリハンの気がおさまるのを待っていた。
するとそのうちきまってメリハンは、

「・・・・ピアノ弾いて・・・」

そう、言ってせがんだ。
すると私は応接間へ移動して子機をサイドテーブルの上に置き、
黒いかたまりの前に座って、彼女の好きなジョージ・ウイストンを弾いた。
彼女はその時々によって、聞きながらさらに泣いていることもあれば、
そのまま眠ってしまうこともあった。
私は最後にいつも、そのおだやかな寝息を聞きながら、
そっと電話を切る自分を感じて、
私のこの、おだやかな気持ちは
一体どこからくるんだろうと少し怖く思った。

だけどそんな電話の小さなリサイタルも、そうそう長くはつづかなかった。
私の周囲は、完全に、
メリハンを危険分子とみなすようになっていた。



なにがきっかけだったかわからないのだけれど、
あるときから自分は、
担任の数学教師からとてもマークされているような気がしていた。
私は確かに数学は苦手だったし、その教師の体臭にも辟易していたけれど、
けして、そうとは気づかれないように、適度に愛嬌をふりまいていた。
なのに、少しずつ私だけに棘のある指導が増え、
漠然と、私はこの担任に嫌われているんだな と感じ始めていた。
そしてそれは私のなかで、
少しずつ教師への苛立ちのようなものが生まれるきっかけに他ならなかった。

私は中学に入学してから、
とにかく部活動にのめりこんでいる普通の生徒だった。
朝練をしてから教室にはいり、授業が終わればまたクラブへ出かける。
ちょっといきすぎなくらいにクラブ活動をしていたけれど、
それほど授業に影響を出したわけでも、成績が悪いわけでもなかった。
なのに突然クラスで自分だけが、
3者面談でなく、親と担任の二者面談を行われると知ったときに、
だんだん、「ああ、メリハンのことを言われているのかな」
そんな予感が少ししてきた。
私はその頃意識して制服をださく着ていたし、
影響なんかされてませんアピールを続けていたけれど、
会えば必ず大げさに手を広げて抱きついてくる彼女のアピールのほうが勝って、
私とメリハンの仲の良さは、誰の目にも明らかだった。

学校にはすでに週に3回ほどしか来なくなったメリハンが、
授業中でも私に会いにふらっと廊下に現れると、
それだけでぴりっとした空気が走り、
クラスメートたちは息をのんで、こちらを見ていたし、
自分は完全に注目のまとなんだなってことを思い知った。
それを教師たちが気づかないはずがなかった。

だから、きっと、情報は集められ、
私がメリハンと同じ
在日という境遇であるわけではないと知っている先生から見て、
私が彼女の世界に憧れて、
不良になりたがっているのではないかと勘違いされていたのだと思う。
なぜなら、残念なことに、メリハンに憧れて、彼女の取り巻きになって、
どんどん不良と呼ばれる道に、
足を踏み入れてしまった少女たちが続出していたから。
ほんとうに無垢で、華奢な子供のような少女たちが、
ある日髪を染め、床にすれるようなスカートをはき、
はすっぱな言葉で教師にはむかうようになっていった。
その小さくこぼれるような前歯にタバコをはさんで、いかにもを気取る姿は滑稽で、
ちっとも似合っていないロンタイBABYはいっそ哀れな姿だったし、
そのことに関しては、メリハンの責任だと言わざるをえなかった。

もちろん、突き放せと、言わなかったわけじゃない。
メリハンのためにも、彼女のたちためにも。
だけど寂しがり屋のメリハンが、
慕ってやってくる少女たちを手放せるはずがなかった。

勝手についてくるから傍においてるんだと言いつつも、
親と問題があることを聞けば、一緒に泣いてやり、
少しでも楽しくさせてやろうとバカ話で盛り上がるメリハンの優しさは、
きっと私生活で問題があった少女達の一時の癒しでもあった。
それがたとえ、授業をさぼって、タバコを吸って隠れてるだけでも、
彼女達にとっては、日常の憂さを忘れられる、スリルと昂奮の毎日だったのだろう。

だけどメリハンは、実はものすごく身持ちが堅くてまじめで、高潔で、
けして自分は堕ちるところへ堕ちないつもりであるのを私は知っていた。
シンナーや薬物に手を染めることも、安易に男に体を許すことも、
万引きやかつあげで稼いだりしないことも、カンニングさえしないことも。

だけど少女達は、メリハンといることで自分が強くなったような気がしていたのか、
それともメリハンに認められたかったのか、
次々にそれらに手をだしていくようになる。
まるで、メリハンが唆したかのように、
彼女の紹介する男の子たちに、体を触られて堕ちていく。
そして、ひとり、またひとりと、
学校から消えていくあどけない少女たち。
そして、彼女たちが染まっていくのを観るたびに、
自分よりはるか彼方に堕ちていくのをみるたびに、
表面状では
「あいつらはしゃーない奴らや・・」
と残念そうにしていたけれど、
心の奥底では、笑いが止まらないほど面白がっているのを、
喜びを感じているのを、私は知っていた。
メリハンは、多分利用した。色んな意味で少年少女を利用していた。
メリハンが少女たちにかけた優しい言葉にも、慰めにも、
本物など何一つないことを私は知っていた。
そのすべてが演技で、本当の正体を隠して生きていていることを、
私は見抜いてた、そして彼女はそんな私を見抜いてた。
だから離せなかったんだと思う。見張っていたかったんだと思う。
だから離せなかったんだと思う。必要だったんだと思う。

メリハンが悪いわけじゃない。

誰もかれもが、誰にも縛られない自由を謳歌するメリハンといるときに感じる、
抑圧のない世界、ただそこにあるだけなのに感じる
高揚感のようなものに突き動かされて、
その影にはいりたがっただけ。
そのために、人生の何分の一かを犠牲にしたがっただけ。
彼女たちだって、メリハンを利用したのだ。
それをわかって、メリハンは復讐していただけなのだ。
だけど「腐ったみかん」って言葉があるでしょ?
あの時代、すごくはやった言葉。
早く取り出さないと、みんなまわりも腐っちゃうって、
あの集団の子供をたとえるにしては、すご残忍で陰険な喩え。
その腐ったみかんのね、レッテルを貼られるのはあっという間だった。
私が愛してやまない寂しがりやの友人は、
誰もかれもが
腐ったみかんと呼ぶ、嫌われ者になっていく。








つづく









  「おもいで」

      1話 「転校生」
      2話 「嘘」 
      3話 「彼女の世界」
      4話 「青田さん事件」
      5話 「名前の由来」
      6話 「腐ったみかん」
      7話 「いじめと逆襲」
      8話 「彼女の正体」
      9話 「全裸事件」
     10話 「後悔」
     11話 「田部くん」
     12話 「殺人事件」
     13話 「つかのま」
     14話 「三本の矢」
     15話 「誕生」
     16話 「斑点」
     17話 「寄生」
     18話 「モノクローム」
     19話 「舌」
     20話 「呼び出し」
     21話 「罰」
     22話 「喪失」
     23話 「犬」
     24話 「希望の石」

   番外編(1) 「おねがい」
   番外編(2) 「おわび」
     











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次くらいからマジで私が嫌いになりますからー
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Category: 恋する思い出
Published on: Mon,  29 2010 14:06
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