恋する小鳥

Irreplaceable 

「おもいで」番外編(1)

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エジプトで、もがいていた頃、
留学後も、ツアーガイドをしながらブラブラと滞在していた私に、
馴染みの教授から何人かが短気留学で行くから
ビザと住むところの手配を助けてやってくれと連絡があった。
当日、大きな広場で待ち合わせて、出会った若い集団は、
初めて見るナイル川の雄大さに目を輝かせていたけど、
そのなかにひとりだけ、堅い表情の男子学生がいた。
なんだか私にすがるような、申し訳ないような顔をしていた彼を気にしつつ、
書類を集めてようやく、その理由がわかった。
1枚だけ、色も形も違うパスポート。
どう見ても日本人の学生の一員に見えた彼は、
韓国のパスポートを持つ在日韓国人というアイデンティティを持っていた。

教授が難しくもない種類のビザの手配を私に頼んだのは、
彼がいるためだったのだろう。
日本語しか話せず、かといって英語も話せない彼にかわって、
私は突如、韓国大使館へ行かなければいけなくなった。
私は韓国語はまるきり話せない、ましてや現地に韓国人の友人もいない。
「英語とアラビア語で通じればいいけど・・・」
そんな不安を持ちながら、彼を連れていった。
エジプト人のセキュリティを通ったあと、韓国人の事務員と話すときになって、
じっと話を聞いていた大使館員の彼女が、
「で、どうして張本人の彼がしゃべらないの?」
と隣の彼に突然聞いた。
そのときの、彼女の声の強さに息を呑んだのは私だけではなかった。
思わず隣にいる彼を見ると、
一番突かれたくないところをいきなり鷲掴みにされたような顔があり、
それはとても悲痛な表情で、私はすぐに見てしまったことを後悔した。
彼は、あ、とか、う、とか一応なにか声は出たのだけれど、
結局、最後までひとことも喋ることができなかった。

あの大使館員の、本当に問いたかったことは、私にもよくわかってた。
韓国籍なのになぜ韓国語で君が話さないのかということではなく、
どんなたどたどしい英語でも、ジェスチャーでも、

「どうして君が説明しないの?」

彼自身がぶつかっていかなければいけなかった。
代理に、私のような日本人を立てるのではなく、
それが、韓国大使館の韓国人への愛情からくる怒りだろうと感じた。
彼女が言いたかったことは、「そんなんでいいの?」と問うまなざしは、
外国の地に立つまっとうな国民として、彼に覚悟を聞きたかったのだろう。
まるで書類や、国籍を借りるだけの行為にとらえているような、
そんな彼の「しょうがないから」的な雰囲気を、私も彼女も気づいてた。
だけど、あのときの彼に、
それを返せるだけのなにかはまだ生まれていなかったのだと思う。
韓国語で話しかけらることを、なにより恐れてうつくむ彼に、
まだ、なんとかこの時間をやり過ごしたいという以外なにもないような彼に、
私にできることをするしかなかった。


そのあと、なんとかわけを話して、書類を発行してもらったけれど、
彼の落ち込みようは激しく、私の慰めも耳にはいらないようだった。
アパートを探す時でも彼だけはKOREAですと説明しなければいけなくて、
そのたびに「ノース?サウス?」と聞かれ、やりとりが続いた。
またフライトの当日になって初めて聞かされたという他の学生たちも、
いまだ戸惑いを隠せない様子で、彼を腫れ物扱いしていたため、
そのことがさらに、彼のなかのなにかを引っ掻き続けていた。
だけど当時、現地で語学で苦しんでいた私にしてみれば、
母国語がふたつ持てる可能性があるというだけで彼が羨ましく。


「君はいいよねー、羨ましい。
 アイデンティティが二個あるって、貴重じゃない?」

「これから勉強して韓国語も話せるようになればいいじゃん」

「日本じゃ差別されたりするかもしれないけど、
 外国じゃ君はただのハーフだし、有利なことのほうが多いよー」


なんて能天気で、無責任な言葉だろうと今でも思う。
外国にいたから、言えたというわけではない。
私にはメリハンのような在日の友人はとても多く、
彼女たちに話すことと同じことを言っていただけ。
そして無事ビザが取れたときには、調子に乗っていたのか、
過去と未来に渡って、彼の帰化について聞いてしまった。
すると彼は、「親に悪くて・・・」とだけつぶやくように言った。
私は彼を、ただ抱き締めてあげたかった。

何も変わらないのに。ただ、日本語を話して日本の歌を聴いて、
日本の授業を受けて、日本で育って。
両親をちゃんと敬って、そこに母国への愛情と誇りが重なって、
だけど普通の子ならしなくていい苦労が、受けなくていい言葉が、
彼らには無条件にあびせられる現実。
隣で、日本から持ってきたTVゲームを接続しようとはしゃぐ学生たちと、
彼との違いはなんなんだろう、なぜ彼は韓国語ではなく、
アラビア語を日本語の次に話す言語として選んだんだろう。
いろんなことを、考えた。そんな、暑い暑い、あの日々。


私が今さら書いていることは、見る人によって、差別と感じたり擁護と感じたり、
きっと受け止め方は違うだろうと思う。
フィギュアのことをちょろっと記事に書いたら、
両国のファンからバカ死ねと書かれるように、同じだけありがとうを書かれるように、
受ける側によって、受け止め方はさまざまで、
それをいちいち見越して書く事は私の力量では申し訳ないけどできない。
私は私のありったけの愛で、過去にメリハンという友人を愛したし、
彼女の歌うアリランを耳でリピートさせて生きてきた。
だから誰かに「ここは差別だよ」と言われるような表現が
もしかしたら出てくるかもしれないけど、
私はそのような気持ちをこめて、今これを書いていないとはっきり言っておきたい。
たとえ、メリハンがとんでもない少女と書いてあっても、
それは事実だし、そこが魅力だし、
だけど、そのルーツが在日朝鮮人だからではない。
むしろ彼女はそのなかでも浮くほどの、
誰にも手がつけられない少女だった。それは彼女の所以、彼女のルーツであって、
メリハンはメリハンの美学で生きていた。
民族の性質や、そういったものを引き継いでいると言っているわけではない。
本当にそうなら、きっと彼女のことを書きはしなかった。

だけど、受け止め方は違うから、私は彼らと同じ人間ではないから。
どこで傷つけ、どこでお怒りを買うかは、正直まだわからないと思ってること。
そして、差別反対だとか、そういうメッセージはなにもこめてはいないということ。
私にそんな大それたことが、書けるはずもなく。
私はただ、自分の胸にしまっておいた思い出を、書きたかっただけ。
ただ、それを、今書いておかなきゃと思っただけ。
わかって欲しいなどとは、恐れ多くて言えないけれど、
もしも理解してくださるなら、ほんとうにほんとうに嬉しい。
思い出は、このあと、私の過去が出てきて、
本当はメリハンどころじゃ多分なくなっていってしまう。
もっとひどくなる、と思う。
だけど、そこまでいくのに、彼女が素敵すぎて、
どうしても、長くかかってしまった。
青春の、きらめきが色褪せないように、
どうか、最後まで書きたいように、書かせていただけたらと思う。
もしここに、在日の方がいらっしゃっていて、
不愉快な思いをされることがもしもあったとしても、
どうか、許してほしいと思う。けして、深読みしないでほしいと思う。
私の友たちへの思いを素直な気持ちを、どうか許してください。












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彼は今頃、きっとそんなことも忘れて元気に

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Category: 恋する思い出
Published on: Wed,  31 2010 13:32
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