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恋する小鳥

Irreplaceable 

おもいで(14)

三本の矢


こんにちはー、みなさま。

「おもいで」も 14話まできました。
いつも我慢強く、小鳥記事をもしかして待っててくださってたら
すみません・・・もうちょっと続きます・・。
でも折り返してはいますので、あとはどーん どーん どーん。
今日と明日はその嵐の前の静けさ部分です。
ずっと、幸せではいられませんでしたが、
私とメリハンとをつなぐ、もうひとりの友人のことを。

では、つづきです。










中学生だった3年間のなかで、
一番幸せだったのは、2年生の夏だったと思う。

夏のコンクールに向けて、朝から晩まで授業以外は練習のしっぱなし。
吹奏楽部の練習は朝も放課後も土日も休まずあったので、
どこのクラブよりも多く学校にいることができて、
家に帰りたくない私には、うってつけのクラブだった。

私は、誰よりも早く出て、誰よりも遅くまで練習した。
どうしてそんなに熱心なの?と聞かれるたび、
「家に帰りたくないから」と素直に答えていた。
だけど、誰も信用しないことが不思議だった。
どうしてみんなは、そんなに家が好きなんだろうかと理解できなかった。
テレビドラマに出てくるような「アットホーム」なんてものは、
所詮テレビの世界だと思い込んでいたあの頃の私には、、
想像力というものが欠けていたのかもしれない。
だから他の部員は塾や家族との約束ごとで休みも多かったけれど、
私は一日たりとも練習を休んだことなどなく、
やはりどこかでひとり浮いていたんだろう。
私が最も話があうのはやはり指揮者であり音楽家である顧問の先生だった。
先生は、いろんな音楽を教えてくれた。
演奏会にも連れていってくれた。
家にも招いてもらって、沢山のレコードを聴いた。
その先生に師事することで、ようやく、
もうひとつ上の段階へすすめた気がした。

楽器というのは、厄介なもので、
練習を1日休めば、取り戻すのに3日はかかる。
口の筋肉は使わなければ、すぐに衰えるため、
休み明けの練習は、口の筋肉痛がひどくなる。
私はその痛みが嫌いで、マウスピースを家にも持っていて、、
夜でも犬の散歩に行きながら、吹いていたものだった。
楽器は、クラリネットに戻ることは無理だったので、
サックスを吹きながら、オーボエを習い始めた。
オーボエは、木管楽器のなかで、ファゴットと並んでとても難しい。
これだけは他に習いにいかないといけなくて、
顧問に紹介してもらった指導者のもとへ通った。
正直に言えば、私の練習スタイルは、
公立中学の部活範囲としては、のめりこみすぎだったと思う。
普通に府内の金賞を狙っているだけの集団のなかで、
ひとり私は全国に出るつもりだったのだから、
「何言ってんの?」的な失笑を買っていたと思う。
ひとりはりきって先を目指しても、
吹奏楽というのは所詮合奏なので、個人の技量は成績には現れない。
モチベーションだって、かなり違っていたのだろう。
頑張れば頑張るほど、合奏中の音の拙さに辟易して、
むしろ満たされなさでストレスがたまる一方の私を見かねて、
顧問の先生が知り合いの高校を紹介してくれた。
おかげで、週末はその高校で練習することができるようになり、
初めて自分より巧い人達と音楽ができる喜びに目覚め、
スケジュールは厳しくても、私は毎日幸せだった。
そこは私立高校だったので学費が高く
進学することはままならないとわかってはいても、
そこで会う全国レベルの音に心酔して、
もし府立の音楽科に合格できなくても、
こうやって高校でも楽器が続けられればいいなあと、夢まで見ていた。

そんな世界を見せてくれただけで、渡りをつけてくれただけで、
私は顧問の先生への感謝と恩に報いたい思いでいっぱいだったし、
先生の音楽への情熱をそのまま受け継いでいた私と先生は、
とても親しかったのだと思う。
そして
夏のコンクールへの曲に、私のソロがメインで入る曲を選んでくれたときは、
素直に努力が認められて嬉しくて泣いた。
もちろん緊張もプレッシャーも非常に大きかったけれど、
先生の指導の甲斐あって、コンクールでは無事演奏できて、
その年の成績は、部創立以来の好成績をおさめることができた。
おかげで、1年前はあれほど苛めてきた先輩たちが、
最後の最後で「あんたのおかげでとれた」と泣いて喜んでくれて、
ようやく私は、先輩たちと仲良くなれた気がした。
そして私は、先輩たちの投票によって、
ようやく部長になることができた。
そして私は部員の前で、
もう誰にも無視されない、孤独な音を奏でなくていい、
学年関係なく、上手い者、努力する者を優先して編成する
爽やかな楽団を作りたいと宣言した。

私の中学では 部長会議なるものが存在して、
月一度、各部の部長が一同に介して、イベントや問題について交流しあった。
そこでまた投票があり、私は演劇部や美術部など文科系の部長のトップに、
そして友人で女子バスケ部長の東山が、体育系の部長のトップになった。
東山は私の小学校からの友人で、近所の古い神社の神主の娘だった。
成績は抜群で、いつもオール5。
背が高く、快活で黒い目がキラキラと輝いていて、
性格は明るくて、快活。
いつも礼儀正しく、品格があり、健康的。
バスケ部のエースで、女子からラブレターをもらうほどの格好よさ。
当然教師の覚えも大変めでたく、
彼女は間違いなく学園一の才媛だった。

そんな誰もが羨む東山は、実は誰にも言えない悩みを抱えていた。
彼女には、兄と姉がいたのだけれど、
10歳以上歳が離れていて一緒に暮らしていない。
ほとんどの生徒は知らなかったけれど、
私は祖母たちから聞いていたので、知っていた。
彼女のお母さんは、後妻さんで、
お兄さんお姉さんとは腹違いだった。

私は彼女の家の神社に何度か用事で寄ったことがあるのだけれど、
そのたびに年老いた神主さんが出てきた。
中学生の彼女のお祖父さんと言ったほうが、しっくりくるその人が、
彼女のお父さんだった。
それは、神社の娘 という範疇で、
彼女をお嬢さんとしか捉えない人々には見えない、
彼女のいわゆる弱点だった。
彼女は友達が家に来るのをとても拒んでいたし、
自分から両親の話をすることはなかった。
それでも、変な噂はよく流れていて、
お父さんの職業が神官だけに、大人たちの嘲笑のまとだった。
そんな東山の隠している環境を、気づいていても、
口にしなかった私やメリハンの包括さを、東山は気に入っていたのだと思う。
彼女のような超優等生と真逆のメリハンではあったけれど、
私たちはとても気が合い、3人でいることは実に楽しかった。

東山が常に職員室の感嘆を誘う、模範生徒であっただけに、
先生たちは私以上に忠告を重ねていたけれど、、
メリハンとの友情だけは、彼女は頑として譲らなかった。
もともと頑固で潔癖で正義感に満ちたジャンヌ・ダルクな東山は、
不良とか、落ちこぼれといった眼鏡で人を見る事はなかったし、
一緒にいるからと言って、他のことをおろそかにする子ではなかったため、
メリハンと東山と私というアンバランスな3人を、
ようやく学校も認め始めていたのだと思う。
私も、ひとりよりは東山というガードを得て、、
両翼でメリハンを包囲できて楽になっていた。
部長運営で望む文化祭も体育祭も、私たちはメリハンをうまく扇動して、
いつも出てこなかったり、
妨害したりする不良たちを、参加させることに成功した。
メリハンは私と東山の二人がかりにあって、大いに文句をたれながらも、
頻繁に学校へやってくるようになっていたし、
東山の陰謀で、彼女が籍だけ置いて幽霊部員だったバドミントン部の
練習試合にも無理やり出場させられていた(ラケットも持ってないのに)。
東山は彼女の取り巻き達も揃ってバドミントン部に入部させ、
休み時間に、長いスカートの不良少女たちが
バドミントンをしながら笑っている光景をよく見るようになった。
それらはすべて東山からの教師たちへの誠意だったし、
先生たちも、そんな東山をますます尊敬した。
メリハンがライオンの日は二人がかりでも、きつかったけれど、
普段猫でいてくれるときは、うまくいった。
学校中がおだやかにすぎた。
「3本の矢は折れないんです」を合言葉に、
私たち3人は、なにかあれば寄って一緒に行動した。
私には今までと違って少しずつ、
メリハンが「学校は楽しい」と徐々に感じはじめていることを知っていた。
その頃の私には夢があった。
メリハンをちゃんと卒業させて、高校に入れること。
そのために、今の成績と出席日数では難しいとは知っていたけれど、
たとえどんな高校でもいいから、
進学させること、そんな夢を、ぼんやりと描き始めていた。


いつもあの頃、
3人で校舎を駆けていたオレンジの夕暮れ。
3人とも、いろんなものを抱えながら、
それでもいつも、冗談を言って笑っていた。
大人になれば、あと少したてば、
強大な力が手に入って、強大な自由が手に入って、
こんな町から出て行く。
そのための潜伏期間のような、
そんなソルジャーな私たち。
そのときは、二度と会わないでいようと、
都会で会っても、知らないふりをしようと言ってたね。
昔を思い出すすべてのものを、
私たち3人は捨てる夢を見てた。
そしてそれは実現してしまう。

もう二度と、会うことはない、
それが、約束だったから。



つづく










  「おもいで」

      1話 「転校生」
      2話 「嘘」 
      3話 「彼女の世界」
      4話 「青田さん事件」
      5話 「名前の由来」
      6話 「腐ったみかん」
      7話 「いじめと逆襲」
      8話 「彼女の正体」
      9話 「全裸事件」
     10話 「後悔」
     11話 「田部くん」
     12話 「殺人事件」
     13話 「つかのま」
     14話 「三本の矢」
     15話 「誕生」
     16話 「斑点」
     17話 「寄生」
     18話 「モノクローム」
     19話 「舌」
     20話 「呼び出し」
     21話 「罰」
     22話 「喪失」
     23話 「犬」
     24話 「希望の石」

   番外編(1) 「おねがい」
   番外編(2) 「おわび」
     










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Published on: Tue,  06 2010 20:11
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