恋する小鳥

Irreplaceable 

おもいで(15)

誕生



おはようございます。

「おもいで」について、お話ごとにちいちゃなタイトルをつけてみました。
お話の一番下にリンクもつけてみました。
綺麗に24話で終われれば、なんかいいなあって思ってるんですけど。
今日から、私の生い立ちについて少し触れています。

冒頭から多分、不適切な表現が出てきます。
いまそれを、この指が書きそうな気がするから。
だけどそれは、そのとき感じたことであって、
素直に表現してはいるけど、あまり真剣にとらえないでください。
きっと読み手のみなさまのほうが、重くなっていくと思うので。
さらっとね、流してください。
もしくは、ここで引き取ってください。




では、つづきです。








何から話せばいいのか、
ずっと考えていたよ。

どこから紡げばつながっていくのか、
ずっと思い出していた。

小学生だったあの日、友達に言われたんだった。

「お父さん、働かずに家にいるってほんと?」

私は口をあけたまま、まったく言葉が出てこなくて、
そのまま地面に固まっていた。

ちがう、ちがうの、
あれはね、
怖くて醜い、モンスターなの。
あのひとは、私のお父さんなんかじゃない。
あのひとは、
絶対にあのひとは───





    ◇    ◇    ◇



兄がまだ母のおなかにいた頃、
両親は、待望の赤ん坊を待ちわびて、とても幸せに日々を暮らしてた。
見合い結婚で母が嫁いだ父は、五人兄弟の末っ子で、
元サッカー選手だったために、第一印象が良く、
母は一目ぼれだったという。
父には3人の姉と1人の兄がいて、
本来ならその兄が家を継ぐはずだったのだけれど、
その素質がないと判断した祖父が、とうの昔に勘当してしまっていた。
そして、末っ子の父が、すべての土地や家を受け継いでいた。
その、祖父の判断が、
結局家を没落させたのだから、
名だたる校長センセとはいえ、所詮愚者だったのだろう。
祖父と祖母の子供たち5人は、揃いも揃ってブタだった。
教師夫婦の子息子女とは思えない、不作の数々。
全員ブタだ、豚よりも醜いブタだ。
私が魑魅魍魎と呼ぶ、ブタ兄弟。
なんでか全員まだ生きている、祖母をあれだけ苦しめながら、
いけしゃあしゃあと葬式で
「おかーちゃーん」と泣いていた。
まるで、ただ運が悪かったみたいに、
天災に見舞われたかのように、
被害者づらでそこにいた。
全員、殺してしまえばよかった。





祖父の愛した庭の桜は、
まだあの頃、満開に咲き誇っていたっけ。
あの木をもし切らなかったら、なにかが変わっていたのだろうか。
ふるさとの禍々しさを、振り返るようなことはなかったのだろうか。

兄が、まだおなかにいなければいけなかったとき、
隣の家を占拠していた伯母夫婦がマイカーを側溝にはめてしまった。
伯母家族が住んでいた家は、元々私の両親の新居用にと建てられた家だった。
母は、その家つきで父と見合い結婚したので、
当然新居でふたりきりの新婚生活が送れると思い込んでいた。
でも、祖母は嫁よりも自分の娘のほうを大層可愛がったので、
ある日、家族四人で「行き場がない」と帰ってきた娘に、
その新居を与えてしまった。
もうすぐ嫁いでくる母には知らせず。
そして、盛大な嫁入り道具を運びこむ際に、
母はようやくその家が、乗っ取られていることを知ったという。
母の嘆きもむなしく、父は姉である伯母に甘く、
結局、両親は祖母と3人で、新婚生活を屋敷で送ることになったのだ。

それでも、兄が生まれるまで、ふたりはとても仲むつまじく暮らしていた。
父は、見た目が格好良いのでモテただろうが、
母をちゃんと大事にしていたそうだ。
母は、本当の恋自体がはじめてだったそうで、
父がただただ格好良く見え、まだまだ恋愛気分だったのだという。
だけど、伯母はふたりの姉とともに
毎日本家に出入りして祖母の世話をやき、
結局母は、1人の姑と、3人の小姑に小間使いのように使われていた。
仕事もやめ、祖母の下で家事や親族ごとを手伝う、
そんな労働の日々が続いていた。

伯母たちの母いじめは相当のものだった。
置き場のないほどの嫁入り道具のたんすもただヒンシュクを買い、
お嬢さんでやってきた母に対する、いびりようは想像を絶した。
その日も、おなかの大きい母の体調など考えず、
伯母は側溝に自分たちがはめた車を引っ張り出すよう、要請してきた。
母は近所の大人達にまじって、一生懸命車を持ち上げたそうだ。
そして、急に産気づいてしまった。
結果、急ぎ救急車で運ばれた病院で、
兄は超未熟児としてこの世に生まれてくることになった。

新生児ICUのカプセルのなかで、生死の境をさまよう息子に、
父も母も、病院にはりついて祈りを捧げた。
そして兄がなんとか命の危険を脱し、退院して家に帰ってこれるようになると、
その兄を、本家の長男として祖母はことのほか喜び、
両親も、それから責任を感じていた伯母夫婦も溺愛した。
アルバムには両親が人工ミルクのリバウンドで力士のように膨れた兄を、
重そうに抱えて、でも嬉しそうに階段を歩く姿が何枚も貼られていた。
兄は、家の宝物だった。

そして二年後の春分の日、私が生まれた。
そのとき仕事先から駆けつけた父が、
私を見てひとこと言った。
それが、私のすべてといってもいいような、そんな言葉になった。

「なんや、女か」

父は、吐き捨てるようにつぶやくと、それきり仕事場に戻って行った。
今まで、満点のパパであった父の、見た事もない表情。
母は、当然ショックを受けた。
それは、自分は男を産まなければいけなかったこと、
女では父の愛をもらえないこと、
自分たちのお見合いは、そのための結婚であったこと、
ようやく、思い知ったのだという。
そして、母がひとりで、私にその日の朝の連続テレビ小説で観た、
当時では珍しい自立を目指すヒロインの名前をつけた。

「この子は、男に頼らず、ひとりで生きていける女性になりますように」

私は、ちゃんとその呪文にむくえていますか?



もし母が、私に、その父のひとことを、
内緒にするだけの思慮があったなら、
私の人生は、違っていたのではないかと思う。
だけど、母はことあるごとに、
「お前が生まれたときは、誰も祝福してくれなかった」と嘆き、
私に彼らを恨むように扇動した。
私は兄しか見えない父を憎むことはなかったけれど、
自分が、男に生まれてこなかったことを、ずっと後悔していた。
そして、その後悔は、いまなお私に問いかけをさせる。
ねえ、神様、

私はどうして、女に生まれたの?

私が男で生まれてきたら、
父は私を、愛してくれたの?

私が女じゃなかったら、
母は私を、愛してくれたの?




つづく












  「おもいで」

      1話 「転校生」
      2話 「嘘」 
      3話 「彼女の世界」
      4話 「青田さん事件」
      5話 「名前の由来」
      6話 「腐ったみかん」
      7話 「いじめと逆襲」
      8話 「彼女の正体」
      9話 「全裸事件」
     10話 「後悔」
     11話 「田部くん」
     12話 「殺人事件」
     13話 「つかのま」
     14話 「三本の矢」
     15話 「誕生」
     16話 「斑点」
     17話 「寄生」
     18話 「モノクローム」
     19話 「舌」
     20話 「呼び出し」
     21話 「罰」
     22話 「喪失」
     23話 「犬」
     24話 「希望の石」

   番外編(1) 「おねがい」
   番外編(2) 「おわび」
     











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もう、愛なんか何ひとついらないけど
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Category: 恋する思い出
Published on: Wed,  07 2010 12:20
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