今日は連休のはじまりなのに、
棟田選手がオリンピックに選ばれなくって 傷心のS子です。
なんでだろう、なんでそうなるんだろう、
どうしてオリンピックにだけは 彼は行けないんだろう。
全然関係ないですが、先日光市母子殺害事件で死刑判決が出ましたね。
あの本村洋氏を初めてテレビで観たときの衝撃を
私はずっと忘れられないでいます。
久米キャスターのニュースステーションだったと思いますが、
同情とか感情以外のところで 鳥肌が立って、
あの選び抜かれた言葉の数々と、完膚なきまでの統制された弁論、
美しい姿勢、苦悩でかたまりついた表情、
どれをとっても、完璧なまでの「人間」がそこにいました。
その衝撃は私だけでなく、日本全国でその反響は大きく
そして なによりメディアの人々は彼から目が離せなくなりました。
言葉とスレスレの倫理観を駆使して働く報道人として、
彼の出現はどれほどの衝撃だったのか。
いつのまにか彼の前で彼にひれ伏し、
どこかで彼を推挙あがめている自分たちを
もう止めることはできなかったのではないでしょうか。
今の時風はいろんなものに「カリスマ」とつきますが、
真のカリスマとは、こういったものなのか、
言葉すべてに虚像や、思惑や、嘘がなくて
こうも人心の心を惹きつけるのか、
そう、ただ呆然とひとつ年下のはずの彼を見てきました。
死刑の判決が出て、なお、最終決定がなされたのちには、
これでもう日本が本村洋を見れなくなるのか という
淡い無念さがにじんでいるような気さえします。
彼をもっと見ていたいという思いは、
被害者の苦しみをのぞいていることになるにも関わらず、
私自身 抑えることができません。
彼を見ていると、やはりこの世に神はいて、
司法や報道や国を変える力のあるべく人間を、
人々の心を動かせるひとを選び、試練を与えるのではないかと
そう思えてなりません。
でなければ拉致被害者家族の横田早紀江氏や、
本村洋氏のような傑物が
偶然にも このような運命に巻き込まれたなど
到底思えないのです。
どちらも、表情に刻まれた苦悩と悲しみで
いつも笑顔さえ凍りついていて、張り付いていて、
その涙には必ずといっていいほどこちらも泣いてしまい、
そのシンパシーはなぜ起こるのか、どうして彼らが泣けば
こちらも泣けるのか、
そのへんに、私にも人間という脳のシステムを組み込まれていることを
思い知らされてしまいます。
彼らのように、いつかとてつもない悲しみが私を襲ったときに、
私はひとりで立ち上がれるのでしょうか。
私は死刑廃止論者ではないし、死体を犯してなお
「生き返らせる儀式」などと、本気で言っていればそれは
なおさら有罪であると断罪するけれど、
今回は 心のなかで 「死刑になるな」 と願ったりした。
もし死刑になったら、彼は今よりも楽になれるのか、
「お墓に報告にいきますか?」と聞かれたときのあの戸惑いは
見ているこちらが辛くて仕方がなかった。
本村氏の一生に、罪人とはいえ若い命の火を課していいのか。
重すぎる重圧と責任を、これ以上負わせてそれでいいのか。
もう、解き放ってあげてほしい、彼は被告の死を願うのではなく、
死刑というこの国の秩序を誰よりも欲したのであって、
しかしそれは 日本の未来の布石になるとはいえ、
彼を押しつぶすにあまりある重い冷たい石ではないか。
まだ神は、彼ひとりを犠牲にし、かくも責め給ふのか。
「自分が死んだらあの世であなたの妻と結婚する」 などと言われたら
その想像はやむことがなく、やめてくれと叫び出しそうではないか、
天国で妻子がおびえ悲しんでいるのではないかと、
そう思いつきやしないだろうか。
そんな弁護は、あまりにもむごいではないか、
そんな弁護は、あまりにも卑劣ではないか。
棟田選手はきっと、晴れ晴れとした表情で
いつものように選ばれた選手にエールを送るのだろう。
そしてあざやかに引退するのかもしれないし、
美しく道場に座って泣くのかもしれない。
強さとは、なにか。
追い求めれば、強くなれるのか、それとも、
強いからこそ 負けるのか。
その負けに勝つからこそ 強いのか。
強い と 強い人 は別だ。
私は強くなくていいから、強い人になりたい。
誰も守れなくていいから、誰にも迷惑かけずに、
自分だけはひとりで守って ひとりで生きて生きたい。
「寂しい」とか「つまんない」とか、
ひとのぬくもりが欲しいなどとは言い出さないで生きて生きたい。
華々しくカメラの前に立って泣く人生は
ほんのひとにぎりのひとのもので、
それが栄光とは限らず、屈辱のときもあり、
汚辱にまみれているときもある。
私の人生は 今はそこでフラッシュを浴びる人を眺める側にあるけれど
いつ何があって 運命が巻き起こるかは 誰にもわからない。
でも、私は今、彼を見ているだけで
幸せな時代に生きていると実感さえするのである。
本村氏の生き様を見て、自分をふりかえる時間を持てた。
こうあれるか、こうあるのが正しいか、
何度も逡巡する機会を持てた。
それはどんな指南書や、どんな映画にも勝る、濃密で苦しい時間だった。
あの判決は、被告だけでなく 彼にも、私達にも
この国に下された重いひとつの「死」だった。
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